卵焼きプライパン
これは、5月号のサークルニュースに載せた私のコラムです。
ずいぶん前に、私が小学2年生ときに、
母親にのせられて、公文式をはじめたという話を、
このコラムに書きました。
今年度に入り、
「国語の森」という
小学生低学年向けの授業を担当しています。
自分の小学2年生のころを思い出して、
こんな感じで勉強していたら、
今頃もっとかしこくなれたかなぁと思います。
今回は再び、私の小2のころの話を書きたいと思います。
私には2歳年下の弟がいました。
私が小2のとき、弟は幼稚園の年長でした。
堺東の「花田口聖母幼稚園」に通っていました。
塾生の中にも、ここに通っていた生徒がいるようですね。
弟はその年長のときに、
風邪をこじらせて肺炎になりました。
ネツがあるのに、家で暴れまわっていたからです。
すぐに入院することになりました。
入院先は「大阪労災病院」でした。
母は付き添いで病院に入り、弟の世話をしていました。
家では私と父と祖母の3人になりました。
母は、毎日帰ってきては夕食の用意などの
家事をして出て行きました。
朝食は祖母が作ってくれていましたが、
母の朝食に慣れていた私は、
少し物足りなく感じていました。
しばらくして、弟は肺炎をこじらせて髄膜炎になり、
高熱を出して意識がなくなりました。
どうやら病院でも暴れていたようです。
意識が戻ったときには、
それまでの記憶が消えていました。
自分に向かって「コレ誰?」と聞いてくる弟を見た母は、
胸が押しつぶされそうになったに違いありません。
母はますます家に帰りにくくなり、
そのころ、私も喘息を出して、
親戚の家に預けられるようになりました。
父は、中小企業の社長をしていて、
忙しい毎日を送っていました。
今なら、その当時の父をとてもよく理解できます。
喘息が治り、父が親戚の家に私を引き取りに来ました。
帰りの車の中で、
「ウチ、おばあちゃんとお父さんだけやからなぁ。」
と、ボソッと私に言いました。
寂しいという意味だと私は理解しました。
私は母から朝食の作り方を教えてもらいました。
といっても、ご飯の炊き方、味噌汁の作り方と卵焼きの作り方です。
私は毎朝、6時ごろに起きて、台所に立ち、朝食を作りました。
身長が低かったので、
幼稚園児が座るような小さい椅子を台にして
コンロで味噌汁や卵焼きを作りました。
卵焼きには、砂糖を入れたり、
しょうゆを入れたり、塩を入れたりしながら、
一番おいしい卵焼きを作りました。
山芋を摩り下ろしたものを入れると、
やわらかくて、弾力のある卵焼きが作れることもその時知りました。
私が作った卵焼きはとても甘かったはずです。
父は「お前の卵焼きは甘いなぁ~」と
言いながら食べてくれていました。
豪快で偉そうで、常に不機嫌そうな顔をしている父でしたから、
そのときの笑顔は今でもはっきり覚えています。
今私が担当している小2の生徒が、
家で朝食を作っていたとしたら、
保護者の方たちは愛おしくてたまらないと思います。
そんな年齢だったんだなぁと、
教えている生徒達を見て最近よく思います。
誕生日が近づいたある日、
母は私にプレゼントに何が欲しいかを聞きました。
実はウチには、誕生日を祝うという習慣がありませんでした。
父の日や母の日やクリスマスにプレゼントを
渡したことももらったこともなかったのですが、
弟にかまってばかりだったため、
負い目を感じていたのかもしれません。
当時、ファミコンが発売されたばかりで、
そういったものを欲しがっていると思ったのかもしれません。
私は「自分専用の卵焼きフライパンが欲しい」と言いました。
家のフライパンは、油でギトギトで焦げやすく
使いにくかったのです。
真っ赤な、自分専用の卵焼きフライパンを買ってもらいました。
弟が退院してからは、私は朝ごはんを作らなくなりました。
母が、今でもそのフライパンを持っています。
今から思うと、随分タフな小2だったと思います。
しかし、いろいろとやってみると、
案外なんでもできるものだなぁと思います。
実は、この当時、習字、スイミング、公文式という習い事をしていました。
スイミング以外の二つは、親が決めてきたものではなく、
自分でどこの教室に行きたいということを伝えて始めたことばかりです。
そして、その主体的にアレコレと自分で決めて動くというクセは、
今になって大きく役に立っていると思います。
小学生の生徒には、よく、「自分のことは自分でしよう」
と伝えています。もちろん中学生にも言っています。
最近、親任せ、人任せのような、
自己管理が甘い生徒がだんだん高年齢化しているようです。
子どもを「自立させる」。
そして、自分の能力を社会に役立てるということが
教育の目標だと思います。
子どもたちに自立させる機会をたくさん持たせると、
勉強もスムーズに進められるようになります。
釈迦に説法かもしれませんが、
どうか、「自立させる」という目線をお忘れなく。
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